はじめに

こんにちは。子丑(ねうし)のくり坊です。
何をしてもうまくいかない。
がんばってるのに結果がついてこない。
努力するだけ無駄。
自分は運が悪い。
もしあなたが、そう思っているとしたら…
これから紹介する本を手に取ってみてはいかがでしょうか?
ジャンル/カテゴリ
文芸/自己啓発
本タイトル/出版社
『 運転者』未来を変える過去からの使者(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

著者
喜多川 泰
あらまし

※ 以下の文章は本の概要を説明するために私が書いたものです
実際の本の文章ではありません


空はいつの間にか晴れわたっている。
先ほどまでの激しい雨がウソのようだ。
私は道路わきに車を停車させると、後部座席から1人の女性を降ろした。
すぐさま後部座席のドアを閉め、私は再び車を走らせる。
私はタクシーの運転手。
近い将来、彼女は自分の身のまわりで起こる出来事に驚き、そして戸惑うはずだ。
そして、先ほど私が彼女にした『あの世間話』の意味が何であったのかを、その時に理解するだろう。
私は今からある人物を乗せて『ある場所』に行かなければならない。
その人物とは面識もないし、当然この車に乗せるのも初めてだ。
しかし、私はその人物をよく知っている。
その人物が今、どのような状況にあって、どこにいて、どこへ行かなければならないのかを。
とにかく
ようやくこの日が訪れたのだ。
25年前にかわした、あの人との『約束』を私は果たさなければならない。
たとえ今から乗せる人物がどれだけ困惑し、どれほど私に恐怖を感じようとも…
しばらく車を走らせていると、タクシーを止めようと手を挙げている男性がいる。
彼こそ、今から私が乗せなければならない人物だ。


彼は生命保険の営業マン。
奥さんと中学生の娘さんとの3人家族だ。
奥さんは今年の夏休みに家族で行く海外旅行を楽しみにしている。
そして
中学生の娘さんは2年生になった頃から学校へは行っていない。
思春期の難しい年頃でもあり、親子のコミュニケーションが上手くとれていないようだ。
だから
娘さんが不登校になった理由も分からず、対策も立てられないままただ困惑しているだけだ。
そして
今日の夕方、奥さんと共に担任教師との面談に行く予定になっているのだが、そんな彼に『最悪の出来事』が起きている。
今の彼は面談どころではないはずだ。
このままだと次回からの給料が、今までの半分になってしまう。
そうなったら、予定している海外旅行の代金を振り込むこともできない。
いや、そもそも海外旅行どころの話ではない。
何とかしなければ生活自体がままならないのだ。
それに
彼にはそれ以外にも考えなければならない問題が山ほどある。
娘のこと、夫婦のこと、田舎で一人暮らしをしている母親のこと、実家のこと…。
もう、何をどうしていいのかも分からず、藁にもすがりたい気持ちでいるだろう。
だから、私が来たのだ。
彼の運転手である私が…
ある運転手の談話


いやー、大変でしたよ。
だってあの人、ずぅぅーっとイライラしてて不機嫌なんですもん。
初めて乗車してきたときなんて、私への恐怖心と警戒心が強くて。
私のこと詐欺師だの、ぼったくりだのって酷いこと言うんですよ。
こんな良心的な運転手つかまえて…信じられます?
で、とりあえず『彼が行くべき場所』へお連れしたんですよ。
人生の運気が大きく変わるあの場所に。
なのに!なのにですよ!
次の日に乗車してきたときなんて、ものすごーくイライラしてて。
で、彼に昨日の出来事を尋ねてみたら、もうガッカリしましたよ。
まぁ、そうなっちゃうんじゃないかなーって内心思ってましたけど…予想どおりでしたね。
ま、気持ちは分かりますけど…でも、あれじゃ何も変わらないですよ。
ですから、前回お連れした場所をキッカケにしてどうなる予定だったかを、彼に話してあげたんですよ。
彼が今直面している仕事の悩みを踏まえ、あの場所で何が起きて、その後どうなるはずだったのかを。
そしたら彼、言葉にならないくらいビックリしてましたよ。
おそらく私への恐怖心も倍増したでしょうね(笑)
「なんでそんなことまで分かるのか!」ってね。
そりゃ、長年この仕事をやってますからね。
乗ったお客さんの状況や、どこへ行けばいいかくらい何となく分かるようになりますよ。
え?ならないですか?
とにかく、彼には「不機嫌なのはダメだぞー、常に上機嫌だぞー」ってアドバイスして次の場所にお連れしたんですけどね…
ところが3度目に乗車してきたときなんて、いきなり私に怒鳴ってくるんですよ!
「誰のせいでこうなったと思ってるんだ!」って。
本当にビックリしちゃいますよ。
こっちにしたら「え?何で怒ってるの?」て感じですもん。
せっかく彼の運が変わる場所にお連れしたのに。
で、また話を聞いてみると彼は「ずっと上機嫌でいたのに…むしろ最悪だった」っていうんですよ。
結局、『上機嫌でいる』ってことがどういうことなのかを正しく理解していないみたいで…
ただ上機嫌のフリしているだけじゃ、人の心はつかめませんよ。
どんなに上機嫌に振舞っても自分にとって損か得かで自分の行動を選択してるから下心がみえみえなんです。
そもそも基本姿勢が不機嫌な人に『幸せのキッカケ』を見つけることなんてできっこないんですよ。
だから、彼には今のスタンスを変えるようにアドバイスしたんです。
「もっと周囲に興味を持て」って。
ある営業マンの談話


あの運転手の第一印象?
初めてミラー越しに運転手の顔を見たとき、高校生かと思うほどに若くて驚いたよ。
その後は…あー、もう最悪だったね。
あの時、間違いなく運転手とは初対面だった。
なのに…行先も告げていないのに…
私の行きたい場所や娘の学校のことまで知ってるし、さらに私の名前まで…
あまりにも怖くて鳥肌が立ったよ。
おまけに私の仕事のことからプライベートのことまで何でも知ってるんだ。
それに、料金メーターを見たら『69,820』ってなてるじゃないか!
だから、こいつはとんでもない悪徳タクシーに違いないと思ったんだ。
ところが、メーターの数字は金額じゃなくてポイントだっていうんだよ。
何だよ、ポイントって…
こんな得体の知れないタクシー、誰でも警戒するでしょ!
でも、今は彼に感謝しているよ。
私をあのタクシーの乗客に選んでもらえて本当に良かったと思ってる。
『運の良し悪しとは何なのか』
『努力は報われるものなのか』
『自分の存在意義、役割りとは何なのか』
色々と大切なことを学ばせてもらったからね。
もしかしたら、いつかあなたの所にも現れるかもしれないよ。
あなたの運転手が…
ある男性の談話


最初、運転手が不思議な話ばかりするもので随分変なタクシーだなって思ったんだけどね…
じつはあの時、私は運転手の話をよく聞いていなかったんだ。
だから、あんな非常識で不思議な話なのに、私から質問することもなかったし、ただ黙って何となく聞いてたんだよ。
あの日…あのタクシーに乗った日だけど、私は歩いて山へ行くつもりだったんだ…
本当はタクシーに乗る気なんて全くなかったんだけどね。
目の前に現れたタクシーの運転手が「もうお代をいただいてるから乗って下さい」なんて妙なことをいってね。
どういうことか分からなかったけど、あの時は「乗れっていうなら、乗ってやるよ」って…まぁ、あまり細かいことを気にせずにタクシーに乗ったんだ。
しばらくすると山奥に近づいて来てるのが分かったから、そろそろ降ろしてもらおうと思ったんだけどね。
ところが、いきなり道を右折したかと思ったらそのまま蕎麦屋の前までいって「ここの蕎麦を食べませんか」って、運転手が。
とてもそんな気分じゃなかったから断ったんだけどね。
そしたら運転手が「たとえ明日がないとしても、最後にここの蕎麦を食べてもらいます!」っていってね。
正直、ドキッとしたよ。
どういうワケか、運転手は私の考えていることが分かるみたいだった。
そのあと運転手が私に語ってくれた話に、もう涙が止まらなくなってね……
結局、山には行かなかったよ。
ある主婦の談話


そうね、今思えば不思議なタクシーだったわね。
確かあの日は…友人たちとランチ会をして、そのあとに別の約束があったのよ。
ところが、ランチ会が終わって次の約束の場所に向かう途中でゲリラ豪雨にあって…まさか雨が降るなんて思いもしなかったから新しい靴を履いてきてたのよ…だから、もう最悪!って思ったの。
そしたら、ちょうどあのタクシーが目の前で止まって、すかさず飛び乗ったわ。
雨にあたって本当に最悪だって運転手さんに話をしたら「むしろよかったんじゃないですか?」っていうのよ。
私、目が点になちゃって、思わず聞き返したわよ。
で、その時の運転手さんの話がとても印象的で心に残るもだったの。
もし、その話を聞いていなかったら…今頃どうなっていたか…
読後の感想


私もかつて、この作品の主人公のように仕事での人間関係や、一人暮らしをしているの父のこと、それに残されていく実家のことなど、思い悩んでいた時期がありました。
私の父はすでに亡くなりましたが、過去に色々あったにせよ最後まで一人にさせていた親不孝な息子という思いは今も心のなかにあります。
私もネガティブな思考をするタイプなので、この主人公と同じように自分は運が悪い、何をやっても上手くいかないと思ってきました。
それに、主人公が運転手に噛みつくセリフのひとつひとつが、「私も同じ物言いをするだろうな」と思うものだったので、主人公と自分とを重ね合わせながら読みました。
物語のなかで運転手は、運とは貯めてから使えるポイントカードと同じだといっています。
私はこれまでそんなふうに考えたことがなかったので、この運を『使う』『貯める』で表す考え方に、私はハッとさせられました。
確かに運が『良い』『悪い』という言い方だと、自分の努力や行動の成果というより『偶発的』『先天的』『他力本願』といった自分以外の力が働いている感じがします。(受動的)
一方、運を『使う』『貯める』というふうに考えると,自分で『運』のありようを決めている感じがします。(能動的)
- 運が良い → 貯めた運を使っている
- 運が悪い → 運を貯めている
と考えれば、かりに運が悪いことがあったとしても、「今の私は運を貯めるているんだ。将来、必ず良いことがある」と少し希望をもって歩んでいける気がしませんか?



辛いときはなかなか難しいでしょうけど…
さらに運を貯める方法として『人の幸せのために時間を使う』ことだといっています。
私は、運を貯めるようなことを何かしてきたのだろうか?



ゼロとは言わないけど、運が貯まるようなことしてないよなぁ…
振り返ると自分のことばかりの人生をでしたね。
これからは、私も運が貯まる生き方をしていきたいです。
それに、自分の将来がどうなるのかなんて誰にも分かりません。
幸運だと思った出来事が、振り返ってみると不幸の始まりだったかもしれないし、逆に不幸な出来事だと思っても、じつは将来に幸運をつかむキッカケなのかもしれません。
そんな不確実で答えの出ない未来のことを、必要以上にあれこれ悩んでいても何も解決しないですよね。
だったら、いま目の前で起きていることを楽しんだほうがいい。
そんな気持ちにさせてくれる作品でした。
この作品は自己啓発本になりますが、文章が読みやすく物語になっているので、難しく考えずに文芸作品として読んでみてもいいと思います。
主な同一著者作品
ソバニイルヨ (幻冬舎)
君と会えたから…… (ディスカヴァー・トゥエンティワン)
賢者の書 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)
株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ライフトラベラー 人生の旅人 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)
おわりに
私が読んだ喜多川 泰の著書の中で、2番目にに読んだのがこの『運転者』です。
思いのほか素直な私は、この『運転者』に感銘を受け、いっきに喜多川作品のファンになりました。
その後、著者の他作品を続けざまに数冊読みました。
どの作品も良かったのですが、私はこの『運転者』と『ソバニイルヨ』が特に心に残りました。
よろしければ、一度この本を手に取ってみてはいかがでしょうか?


” 読書の時間を大切にしなさい。
1冊の本との出会いがあなたの生き方を変えてくれることだってあります。”
ジョセフ マーフィー( 宗教家、著述家 1898~1981 )
お付き合いいただき、ありがとうございました


今回紹介した本

