
こんにちは!子丑(ねうし)のくり坊です。
今回は” 彼を知り己を知れば百戦殆うからず “という格言について。
出典は中国最古の兵法書『孫子』13篇のなかの《謀攻篇》です。
『孫子』は日本において、もっとも広く読まれている中国古典のひとつです。
今から約2,500年ほど前に孫武によって『戦略・戦術の理論書』として《まとめ》られたとされるこの兵法書が、現代企業の『経営戦略の書』または管理職などの『自己啓発本』として、はたまた『人生を生きていくための教え』として、多くの人に読まれています。

これってすごいことですよね!
ですから、この一節を知っている、または聞いたことがあるという方も結構いるのではないでしょうか?
では、2,500年の時空(とき)を超えて今なお愛読される『孫子』《謀攻篇》の一部分をいっしょに学んでいきましょう。
” 彼を知り己を知れば百戦殆うからず “とは
” 彼を知り己を知れば百戦殆うからず “
【読み方】
かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず
【意味】
敵(相手)と味方(自分)の実情をよく知っていれば、何度戦っても危険な状況に陥(おちい)ることはない。
【原文】
故知勝有五。知可以戦与不可以戦者勝。識衆寡之用者勝。上下同欲者勝。以虞待不虞者勝。将能而君不御者勝。此五者知勝之道也。
故曰、 知彼知己者、百戦不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戦必殆
【読み下し文】
故(ゆえ)に勝を知るに五あり。もって戦うべきともって戦うべからざるとを知る者は勝つ。衆寡(しゅうか)の用を識(し)る者は勝つ。上下の欲を同じくする者は勝つ。虞(ぐ)をもって不虞を待つ者は勝つ。将、能にして君の御(ぎょ)せざる者は勝つ。この五者は勝を知るの道なり。
故に曰く、彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし。
【訳文】
勝利を収めるためには次の5つの条件があてはまらなくてはいけない。
1、戦うべきか否かの判断ができること。
2、兵力に応じた戦いができること。
3、君主と民衆が同じ目標をもち、心をひとつにすること。
4、万全な態勢を整え、敵の不備につけこむこと。
5、将軍が有能であり、君主が軍事に干渉しないこと。
これらが勝利を収めるための条件である。
よって、次のように結論づけられる。
すなわち、敵を知り己れを知るならば、何度戦っても危険な状況に陥ることはない。己を知って敵を知らなければ、勝敗の確率は五分と五分である。敵を知らず己をも知らなければ、戦うたびに危険な状況に陥る。
これは現代社会にも通じることですね。
現代ではインターネットやSNSなどの発達により、多くの情報であふれかえっています。
その中には偽りの情報も数多く存在しています。
ですから、どれが自分にとって必要な情報なのか、またどれが正しい情報なのかを自分でしっかり選別しないと、大きな損害をこうむることにもなりかねません。
だからこそ、私たちは情報の真偽を見きわめる目をもち、自分の生活や仕事、人生にとって正しい情報を取捨選択するための判断力を備えていかなければならないと思います。
何はともあれ、昔も今も情報収集と分析による総合的判断が勝利への道なんですね。



いつの時代も同じですね。
『孫子』《謀攻篇》とは
《謀攻篇》について
《謀攻篇》は『戦争とは目的ではなく手段であり、戦闘によらずに敵を屈服させてこそ最高の勝ち方である』と説いています。
また、『戦わずに勝つための条件やその方法』をあらわしています。
『孫子』について
『孫子』は中国の春秋時代(約2,500年まえ)に活躍したとされる兵法家・孫武の著と伝えられており、現存する兵法書としては中国最古(世界最古)のものといわれています。
なお、現在私たちが手にすることができる『孫子』13篇は『三国志』時代の英雄、曹操が編纂した『魏武注孫子』によるものです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


参考文献
[中国の思想 10]孫子・呉子【改訂版】( [中国の思想]刊行委員会 松枝 茂夫・竹内 好【監修】/村山 孚【訳】/徳間書店 〈徳間文庫〉)
孫子の兵法 考え抜かれた「人生戦略の書」の読み方 ( 守屋 洋【著】/三笠書房〈知的生きかた文庫〉 )
新訂 孫子[電子書籍版]( 金谷 治【訳注】/岩波書店〈岩波文庫〉 )